TOP > CATEGORY > 二次創作 Text
TOP | NEXT

スポンサーサイト 

--年--月--日 (--)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

[RSS] [Admin] [NewEntry]

[--.--.--(--) --:--] スポンサー広告 | Trackback(-) | Comment(-)
↑TOPへ


White surise 

2011年03月03日 ()

新政府時代 シモニア。新年のお話。

('11年 1月インテにて販売したコピー本のUPです)

Open↓



『White sunrise』



夜にきんと冷えた風が頬をなぶり、シモンは思わず身震いする。
カミナシティには、というより地上には昼夜の温度の差はもちろん、季節によっても寒暖があった。
地上に出たばかりはそんなことなど気にしたこともなく、暑い季節を裸同然で過ごしたものだったが、今は「冬」。
さすがにあの頃のようではいられず、総司令服の上着もデザインこそ変わり映えはしないが、厚いものになっていた。
普段はあけっぴろげになっている首元もしっかりスカーフでガードしている。

けれど吐く息はどうしたって白い。細くはきだした吐息の向こうから、常春めいた朗らかな声が響いた。

「シモン、はやくはやく!」
「うん」

思わずシモンの強張った頬も綻ぶ。
彼の名を呼ぶ愛らしい彼女は薄暗闇の中、ふんわりと明るい髪を揺らして小走りに駆けていく。

(元気だなぁ……ニアは寒くないのかな)

彼女も暖かなストールを纏ってはいるものの、ひざ丈のピンク色のスカートはふわふわとボリュームがあって、足元から冷たい空気が流れこみそうなものだ。ブーツこそ履いているが……と、シモンはニアの軽やかな足を凝視しながらぼんやりとそんなことを考えた。

日々めざましいスピードで発展した街は、高層化の一途を辿っている。
今二人がいる屋上は、街のはずれにある十階建てのビルだった。中心地のものと比べれば、低い部類に入るのかもしれないが、ここからはまだ人の手が入り込んでいない赤く広がる大地が見える。

先に行ったニアに追いつけば、嬉しそうに二コリと笑みを返された。
その口元でこすり合わされた手が寒そうで、シモンは手を伸ばす。
両手で包みこめば、自分のそれよりも冷たいので驚いた。

「あったかい。ありがとう、シモン」
「ん、いや……まだ寒くないか」
「……実は少しだけ。スカートの足が冷たいわ」

 おどけたように肩をすくめたニアをみて、男はやせ我慢だ!とアニキが言っていたことを思い出し、シモンは笑った。
女の子もやせ我慢するものなのだ。 
少しでもましかな、と背中から回した手で彼女の肩を抱きさする。
擽ったそうに身をよじったニアの髪が、シモンの首筋を暖かく擽った。

「ラガンで来れたらよかったのにな。そしたらもう少し早くこれたかも」
「仕方ないわ。ロシウも言ってたけれど、皆びっくりしてしまうもの」
「そうかなぁ。オレと同じで穴掘るか、あと空飛ぶくらいしか能がないのに」

 共に戦い過ごしたラガンは、グレンと共に庁舎に格納されている。
もう闘うことはないのだと、平和の象徴として。
けれどどうも退屈そうに見えるのは、自分と同じだという、その自分が退屈しているということなのだろうか。
シモンなりに政府の仕事に精を出し、それなりに上手くやれているとも思っていたが、ふいにこんな時に不安が顔を出すのだった。
シモンが物思いにふけり、少しずつ白んでいく空を眺めていると、ニアがぐいっと天に向けて首をそらす。
頭上のシモンの瞳をまっすぐ見つめると、控え目に彼女の人差し指が暗い空をさした。

White sunrise


「グレンラガンは、アニキさんと一緒ね。
シモンが掘ったアニキさんみたいに、きっとあの頃の気持ちを皆に教えてくれているの。
アニキさんは『地上はすごいぞ!皆が笑って暮らせる場所になる!』って言っていて、グレンラガンは『ここにいるから、何があっても大丈夫だぞ!』って言ってるの」

囁くような声と共に、ニアの体重がそっとシモンに寄りかかる。
彼女の心は、言葉はまっすぐで、無防備で裏が無い。
短いスカートに細い足で、運命に立ち向かっていたあの頃のまま、しなやかで強く、どこまでも優しいのだった。

「……あとはシモンも。いつだって私を元気にしてくれるの」

めずらしく甘えるようにぽそりと言った彼女の頬は、暗がりでもきっと桃色に染め上がっているのだろう。
シモンは彼女のすべてにじんと胸を打たれた。
こまった、今とてもキスがしたい。
けれど言う事を言った彼女は、すっきりとすぐにまた目の前の景色へと心を奪われていた。
いつもどこかタイミングを失う自分に、シモンは苦笑いして、大人しく太陽の光を待つことにする。
まだ暗く沈んでいる大地を眺めて、二人はそっと寄り添う。

きっともうすぐにでも、新しい日が昇る。
地上に上がった時、シモンが心を奪われた光は三人で見た夕日だった。
白い朝日は勝ち取った地上で、二人で浴びた光だ。

また新しく、時は流れていく。


「あけましておめでとう、ニア」




ブータ

Close↑

スポンサーサイト

[RSS] [Admin] [NewEntry]

[2011.03.03(Thu) 00:11] 二次創作 Text | Trackback(-) | Comment(-)
↑TOPへ


Rainy day 

2010年07月11日 ()

3部。シモニア、ロシウ。雨の日のひとコマ

Open↓



パタリと窓を叩いた雨粒に気づいたのは、ロシウが先だった。
シモンはというと、ちょうど窓に背を向けていたせいもあったのだが、目の端でロシウが外を見やる仕草を捉えて、やっと降り出した雨に気づいた。

「雨か」

当たり前の感想を言うと、ぎちっと椅子にもたれたまま回転して窓の外をみる。雫がひとつ、ふたつ、見る間に数え切れぬほど窓を叩き、流れ落ちて行った。
指先がつりそうになりながら書類にサインをしていたシモンは、机上に集中していた意識をため息と一緒に解き放つ。

曇天のためどこか薄暗い執務室。そこで寡黙な補佐官と共に細かな字が並ぶ書類に目を通すのは、なかなか息のつまる作業だ。
しばらく段々と強まる雨音を聞いていると、ちょうど休憩してもいい頃合いと判断したのか、ロシウは書類をまとめると穏やかに席を立った。

「ん、どうした?」
「お茶でも入れてきます」

珍しい提案にきょとんとしてる間に、彼は執務室内に備え付けられていた給湯設備のある一角で、かちゃかちゃと茶器を触り始めた。
いつもなら係の者に言って持ってきてもらう、とかそんな具合なのに。と、シモンが可笑しく思いついたそのままを口にしようとしたとき、ポーンと通信機の音が鳴った。
ロシウが振り返るが、シモンはそれを手のひらで制すると、通信応答のボタンを押す。
押してからなんといえばいいのか咄嗟に出てこず、いつもロシウはなんていってたっけ、とシモンは頭をかいた。

「・・・えーっと、こちら総司令室。」
「あ、シモン総司令・・・ですか!」
「あぁ、そうだけど。どうかしたのか?」

まさか張本人が応答するとは思ってなかったようで、通信機からは間抜けな応答が響いた。
ついで困ったように「その、あの・・・」と報告を濁らせるので、じれて映像回線もONにしてやった。
ブン!と音をたてて執務室の真ん中に、お仕着せの制服をきた男が立つ。驚いた様子の彼は、慌てて口を開いた。

「あの、来客なんですが!」
「客?」

いぶかしんだシモンに、ロシウが湯気のたったカップを差し出す。補佐官が視界に入った男はすがるような眼で彼を見る、がその端からひょっこりと見知った顔が現れた。

「ニア?!」

驚いたシモンに、彼女はぱっと顔を輝かせ、シモン!と笑う。

「・・・タオルをお貸しするように。ニアさん、迎えにいきますからそこで待ってて下さい」

彼女は今やバケツをひっくりかえしたような大雨の犠牲になったのであろう、頭の先からつま先までぐっしょりと濡れていた。
ロシウがぐっと息を詰まらせた後、深くため息をつくとさっさと采配を進めてしまう。
こんな有様でいつものように上にあがってもらうわけにはいかない。衆目もあるのだ。
階下の男が報告したかった意図をロシウは汲んだ。

年月を経て女性としての丸みを帯びた体や、伸びた髪が素肌に貼りつく様子は、映像ごしでも艶めかしく匂い立っている。より慌てたのはシモンである。

自分がいく、という彼を「だ・め・です!!」と凄みをきかせたロシウの目は据わっている。
びしょぬれのニアを総司令がエスコートをするというのは、なんだかスキャンダルな絵だ。二人の関係はいまや本人たちがどう思っているのか知らないが、恋人同士として周知されているのだ。
昼さ中からそんな怪しげな体たらくを見せつけるわけにはいかない、と通信機を切り、ロシウは最高級の椅子にシモンを押し付けると、さっさと部屋を出ていくのであった。

残されたシモンは落ち着かずグルグルと犬のように部屋をうろつく。
雨に降られたとしても、降り出したのはつい先ほどのことだ、そう長い時間ではないだろう。時節もそう寒くはないし、風邪もひかないだろうが・・・とちらりと雨にぼやけた街を見下ろした。

雨はどことなく落ち着かない気分にさせる。
兄貴が逝ってしまったのも雨の日だったし、ニアと出会った時も雨が降っていた。

どうにも落ち着かないので、ロシウが残して行った茶器で暖かいお茶を入れる。彼女の分と、ロシウの分だ。
彼が淹れてくれたカップをすすると、少しぬるくなっていた。

ちびちびとそれを飲みほして、ほどなくプシュンと執務室の扉が開いた。

「シモン!」
「ニア……!」

駆けよるニアの手をとると、ほっとしてシモンは表情を和らげる。
指先はすこし冷たくなっていたが、ニアはいつも通りの笑顔を浮かべている。ただいつもと違って、彼女はキノンが着るような新政府の制服を身に着けていた。水を吸って重くなった私服は、今乾かしているらしい。髪だけが少し濡れていて、ふわふわがしんなりと落ち着いていた。

「大丈夫か?カサはどうしたんだ?」
「うん、私は大丈夫。お弁当を、て思ってたらついカサを忘れちゃったの。ごめんなさい」
「そっか。びっくりした。・・・その、似合ってるよ」

制服は露出が少ないが、若干スカートの丈が短い。シモンは見慣れない姿のニアが照れ臭くて直視しにくい、といったように視線を彷徨わせたが、ニアの言葉にはっと気づく。

「ロシウが濡れたままじゃ風邪を引くからって。ありがとう、ロシウ」
「……いえ、係の者がすぐ気づいてよかったです。気をつけてくださいよ、もう」

ロシウはあの雨にぬれた色っぽいニアを直で見たのである。一気に燃え上がる悋気に、シモンはがっとロシウを引きよせると低音を聞かせた。

「いいか、さっき見たことは全部忘れろ。」
「忘れるもなにも、そんなにじろじろ見てないです!」
「ならいい」

にっとおどけて笑ったシモンにロシウはあっけにとられる。こんな笑い方をする人だったろうか。
ニアはシモンが淹れたお茶にきづいて、すこし冷めてたそれをおいしそうに飲んでいた。そういえばそろそろお昼時だ。彼女が持ってきたお弁当を、シモンは開いて「うまそう!」と喜ぶ。

そして今度はロシウがはっと気付いた。まずい。

「ロシウ、今日のは自信作なの!新しい食材にチャレンジしてみようと思って!」
「けっ、結構です。僕はさっきその、着がえを待ってる間に済ませたので」

そう、と少し残念そうなニアの顔を見ていると心底申し訳ないような気分になるが、自分の胃の健康には代え難い。足早にさろうとした彼に、シモンはせっかく淹れたんだ、のんでけ。とカップを押し付けた。

なみなみと注がれたお茶はすでに湯気も出ていないが、一気に飲み干すにはちょうどよかった。カップを煽って、テーブルに置く。

「ごちそうさまです」
「・・・・悪いな。ありがとう」

すまなそうな顔をするシモンに、ロシウは苦笑いした。彼はこうして席を外す事を、二人に気を遣っているせいだと思っているらしい。もしも純粋にそうなら、もう少し残業だって減っているかもしれないというのに。
・・・・気を遣っていないわけではないが、彼の代わりは誰にもできないから、仕方ない。

「ニアさんの服は1時間もすれば乾きますが、カサは用意しますか」
「いや・・・そうだニア、今日予定あるのか?」
「ううん、特にないわ。公園を見ていこうと思ってたんだけど、雨も降ってるし」
「じゃあ、終わるまで待ってて。一緒に帰ろう」

シモンの提案にニアは微笑み、ロシウは眉をひそめた。

「・・・まさかとは思いますけど、ラガンは駄目ですよ、ラガンは」
「わかってるよ!カサはあるからいいんだ」
「そうですか。・・・ではちょうどいいので、ニアさんには後ほど新しい街の式典の会議に出席していただきましょう。近々お話をしたかったので」
「まぁ!わかりました!」
「ロシウ君はほんと優秀だな・・・」

いちゃつく隙も与えない手際の良さに、シモンはちょっと残念がる。ニアが傍で見ててくれれば、肩のこる仕事も少しは気楽に考えられる、と思ったのだが。


ロシウが去り、二人きりになった今も雨はまだ強く、音を立てている。
しかしお弁当を平らげて、ニアと他愛ない話をしていると、シモンの中にある雨の落ち着かなさも少し和らいだ。デスクの下で眠りこけていたブータも、ニアの膝の上で腹をくすぐられて喜んでいる。

楽しそうに笑うニアの声が耳に心地よい。少しうとうとと目蓋を閉じていると、ふと彼女の指先が肩に触れる。

「シモン、疲れてる?」
「・・・・・・うーん、どうだろう。」

穴を掘ることは好きだったし、シモンはこれまでそれで人の役に立っていたわけだが、新政府での今の仕事は自分でなくとも出来ることなような、そんな気もしていた。
しかしそれを彼女に言うつもりはなかった。

総司令としての仕事が嫌なわけではない。むしろ地上での日々を守っていくことは、テッペリンで螺旋王を倒した日から強く心に決めていたことだ。
ただ、書類を前にした仕事は実感がわかない。やり遂げた達成感が目に見えない。
ゆえに、疲労が蓄積されていくのかもしれなかった。

曖昧に笑うシモンの頬を、ニアはむにっとつかんだ。

「にゃに?」
「ちゃんと言ってくれない人はこういう目に合うのよ」

ぎゅっとつままれて離された頬は、ちょっとイタイ。さすってるともう一度ニアは聞いた。

「つかれてない?」
「・・・・ちょっと疲れてた、かも」
「うん」

ニアの手がシモンの頭を引きよせる。肩口に頭を押し付けられ、幼子のようにぽんぽんと頭をなでられた。
よしよし、とまで言う彼女は、本当に子供をあやすような気分なのだろう。
しかし、それが殊の他気持ちがよくて、シモンはされるがままでいた。少し湿ったニアの髪は雨の匂いがする。

「・・・でも元気でた」
「ふふ、よかった」

午後からはまたいつもの仕事が待っている。
帰りは雨はまだ降っているだろうか。

ちょっとした良い事を考えついていたシモンは、まだ雨が降っていればいいのに、と笑ってニアを不思議がらせた。

雨の日も中々いいものだ。




七夕

Close↑

[RSS] [Admin] [NewEntry]

[2010.07.11(Sun) 23:46] 二次創作 Text | Trackback(-) | Comment(-)
↑TOPへ


おめでとう、ありがとう 

2008年12月06日 ()
超銀河シモニアブライダル「Bon Voyage!」 参加作品。

27話、ギミー視点で結婚式のおはなし。
Open↓



『おめでとう、ありがとう』




やわらかそうな白い雲がわたる、澄んだ青空。
はじめてみた空はもっとまぶしくて、とても目を開けていられなかったけど、今日の空はなんだか優しい気がする。
もしかすると、あの空で散ったあの人達からのプレゼントなのかな?

・・・なんて、がらにもなくしんみりしたことを考えていると、控え室からダリーが顔を出した。

「ギミー!こっち!」
「わかってるって」

恥ずかしい奴!オレはきょろきょろと周囲に目がないか確かめてから、促されるままそろっと控え室のドアをくぐる。
呼び入れられた控え室は新婦側だ。ダリーをはじめとして、黒の三姉妹やヨーコさんといった世話をやく女性であふれかえっている。
たちこめる花の香りがこそばゆくて、しばらくは白いタイルの目をうろうろと見るはめになった。大体なんでオレがここに呼ばれるんだ。

「やだ、なんでギミーが照れてるのよ。やらしいわね」
「っば、ばか!何言ってんだよ!」
「はいはい、騒がないの。」

ヨーコさんがダリーとオレの額をつんと押そうと、指を出す。が、あわてて二人同時に額を隠したら、新婦はこらえきれないといった風に、くすりと嬉しそうに笑った。

そこでオレははじめて、ニアさんを見た。
ココ爺が用意したという淡い花の色のドレスが、ふんわりと広がっていて、腰かけているはずのイスが見えない。髪を結いあげて、赤い花をたくさん飾ったニアさんは、お姫様みたいだ。もともとそういう身分の人だったって、知ってはいたけれど、でも、今日は口紅だってひいていて、なんだかすごく大人で。

「ね?きれいでしょ」

なんでお前が自慢するんだよ。と突っ込みたいところだが、ダリーは頬を紅潮させていて、たぶんその興奮をオレと共有したかったんだろうことがよくわかった。しょうがないやつだ。
でもいつまでもぼーっと見ていたせいか、ニアさんは少し心配そうに「変ですか?」と尋ねてきた。

「・・・お姫様みたいです」
「ふふ、ありがとう、ギミー。でも、わたしはお姫様じゃないわ。・・・シモンのお嫁さんです!」

うわ~、これだよ。オレが気恥かしさに脱力すると、キヤルがぴょんぴょんはねながら、「すげぇ殺し文句!」と笑う。ニアさんも笑っていたけれど、その笑顔を見ていると、恥ずかしい反面でほんとに胸にじんとくるものがある。
宇宙での戦いでたくさんのものを失って・・・怖かったけど、でも頑張ってよかったって思える今が、不思議で。みんなで頑張れたから、ニアさんがここで笑っていて、みんなも喜んでいる。
そう考えていると、今いわないとダメだって胸が熱くなった。

「ニアさん」
「はい」
「オレ、・・・・ダリーも、昔たくさん一緒に遊んでもらって、楽しかった・・・です」
「・・・ええ。わたしも、とっても楽しかったわ」

きれいな花嫁を前に、硬直してしどろもどろにいうオレの背中をダリーがぽんと押した。ちらっと目を合わせると、まだいうことあるでしょ、と苦笑いされる。そうだ、うまく言葉にならなくても、ちゃんと言って、伝えなくちゃいけない。
遠い空で、あの人たちが伝えてくれたように。

「・・・シモンさんと、ぜったいぜったい、幸せになってください」

ニアさんはほんの少しだけ、目を丸くしてから、笑顔でうなづいた。空色の瞳が少し、にじんでいる。

それからふわっと花の香が近くなったかと思えば、オレの頬に、子供のころもらったみたいな優しいキスが降ってきた。びっくりするより何より、すぐさま背後で上がった「あぁっ」という素っ頓狂な声に、オレは気を取られてしまった。

「シモン!」
「・・・・・・・・・・・・・・」

喜色満面なニアさんに対して、シモンさんは、大層ばつが悪そうだ。あげてしまった声を今さら押し込めるように口をふさいでいた。控え室の入り口には、ぞろぞろと男性陣が新郎のあとについてひしめき合っていて、役得だな、ギミー!とからかう声もしっかり聞こえる。
見慣れない格好をしたシモンさんを見てると、はじめて総司令姿が披露されたときみたいに、口元がむずむずする。

「これくらいで妬いててどうすんのよ」
「や、妬いてない。ちょっとびっくりしただけだ」
「ふぅ~ん、どう思う?ニア」

ヨーコさんが意地悪そうに笑って言うと、アンネを抱いたキヨウさんが「もう、からかいすぎ!」と楽しそうにたしなめた。けれど、ニアさんはどこふく風。

「シモンとのキスは後で、でしょう?」

まるで式次第を確認するかのようにきょとんとしているのだから、シモンさんも仕方がないな、という風に笑っていた。

なんだかこれ以上ここにいるといろいろな意味で危険な気がする、あてられる、と本能がつげるので、オレは踵を返した。そろそろ式の時間も近付いていることだし、とキノンが促すと、騒いでいたみんなも、ぱらぱらと二人の肩を叩いて部屋を出ていく。
オレもそのあとに続いて、控え室を後ろ目にみやると、シモンさんがニアさんに手を差し出していた。
ニアさんはその手につかまるでもなく、ただぎゅっと握る。

・・・そうか、握手をしているんだ。

気づくとなんだかちぐはぐな行動が、まったくニアさんらしくて、思わず小さく笑ってしまった。
それと同時に二人はくすりと笑って、何か言葉を交わしていた。



そのときは何をはなしていたのかはわからなかったけれど、部屋をあとにして、澄み渡った青空の下に出た時、ダリーがこっそりと教えてくれた。

「シモンさんとニアさん、これからよろしくおねがいしますって言ってたのよ」

ダリーが空の下、土の上に開かれた式場を見渡して、そっと深呼吸をした。

「これから・・・か」
「そう、これから。明日も、明後日も。」

オレはそれを横目に、二人が一緒になる、結婚というものの意味を、少しだけわかったような気がした。いつも何気なくよりそっていた二人が、一緒にいようと決めたということ・・・何も違わないようでいて、きっと、全然違うことなんだろうな。

「ギミー、ちょっとさみしい?」
「・・・・ダリーこそさみしいんだろ。」

「そうよ。なんだかんだいって、大グレン団は家族みたいなものだもん」

ダリーが風に舞う花びらに手を伸ばし、その指の間から、小さな花びらは逃げていく。オレはかゆいふりをして、くすぐったいキスが降ったそこに触れた。そうだ、さみしいけど、嬉しい。それはきっと、近かったり遠かったり・・・でも一緒に過ごした思い出のせいなんだろう。

(ほんとはありがとう、て言いたかったんだ)

でも言えなかったその言葉のかわりに、ニアさんがくれたキスもきっと。

きっと。



Close↑

[RSS] [Admin] [NewEntry]

[2008.12.06(Sat) 21:37] 二次創作 Text | Trackback(-) | Comment(-)
↑TOPへ


赤い靴の持ち主 

2008年05月11日 ()

「Verai Amor」企画、参加作品。

15話後、すこしずつ成長していくシモンとニア。
Open↓





『赤い靴の持ち主』




何かが空から降ってくる。

その気配に、はっと見上げると、強い真昼の太陽の中から小さな陰が落ちてきた。
考えるより先に反応した右手が、パシリと受け止める。それほど重さがなかったため、衝撃も痛みも感じなかった。光の残像にくらくらしながら、自分の影の中で確かめる。
少し固くて小さくて、光沢のある真っ赤な靴が片足分。ブータが肩からすべり降りた。

「ニア?」

左手で光をさえぎりもう一度見上げると、積みあがった瓦礫の向こう側から、ひょっこりと短い髪を揺らして彼女が現れた。

「ごめんなさい、シモン!大丈夫?」

頭上から彼女が自分の名を呼ぶ、高く弾んだ声。心臓がどきりと跳ねあがる。
それはたぶん、彼女に恋をしているからだ。

はっきり自覚したのは、テッペリンでの戦いを終え、ニアの小さな肩を抱いたときだった。彼女が、甘えるように体をもたせかけてきたのだ。父親を、生まれた場所を失った彼女の悲しみを感じながらも、その重みがたまらなくうれしかった。
傷がうずくほどに、胸がどきどきして、触れていた右手がジンとしびれた。

―――あぁそうか、好きなんだ。

そう気付いたあとは、もうまともにニアの顔を見ることも恥かしくなってしまった。あれから幾日もたった今でも、いざ二人で向き合うとどうしていいかわからない。
顔が見れずに視線をそらして、気付いた。

「ニア、ころんだの?」

ちょうどブータがぴょんぴょんと器用に跳ねて、ニアの足元まで駆け上がっていた。瓦礫についた膝に赤い血が滲んでいる。ニアは恥かしそうに頬を赤らめる。

「散歩のつもりが、靴の留め金が外れてしまったみたいで・・・」
「ま、待って!動いちゃ駄目だ。今そっちに行くからっ」

頭を打ったりしていると、急に動くといけないってリーロンが言っていた。・・・気がする。
息を切らして駆け上ると、ブータが心配そうに、土ぼこりと血で汚れたニアの膝をなめていた。

「ふふ、くすぐったい」
「ブータ!」
「ぶみゅっ?!」

思わずひっ掴むと、ブータはじたばたしながら抗議の声を上げた。

「シモン?」

ニアの不思議そうな視線を感じて、我に返った。顔が燃えるように熱くなった。
つまらない嫉妬。・・・・・なんてかっこ悪いんだろう。ブータは手からすり抜けると、そんな自己嫌悪に陥っている俺とニアを見比べると、「気にするな」とでもいうように、この頬をペロリとなめ上げた。
それから気を利かせたつもりなのか、ぴょんぴょんと瓦礫をかけおり、仲間の声が騒がしいほうへと走り去っていった。

ニアがブータを見送るわずかな沈黙の間に、言うべき言葉が頭でぐるぐるとまわるけど、上手く音にならない。もともと話すことは得意じゃない。自信があるのは穴掘りばかりだ。気の利いた言葉なんて、いえるわけがなかった。

「・・・えっと、ころんだって・・・頭とか打ったりしてない?」

結局ただ率直に尋ねると、ニアはすまなそうに見上げてくる。

「えぇ。ほんとに膝をすりむいただけなの。シモンこそ、どこかぶつけたりしなかった?」

よかった。ほっとして表情を和らげると、ニアも微笑んでくれる。
それにニアの靴くらい、とんできたって大したことにはならない。それくらいにはちゃんと、男になってるつもりだ。

「俺は平気。それよりあっちでちゃんと手当てしてもらおう。立てる?」
「うん。でも・・・・」

差し出した手に手を重ねながら、ニアが見つめた靴は、靴底がはがれかかっていた。ころんだのはきっと、このせいだろう。立ち上がったニアに、それを返す。
よく似合っていた愛らしい靴は、傷だらけで、確かにくたびれていた。よく見れば、かかとだって磨り減っている。めったに戦いの前線に出ることがなかった彼女だったけれど、父親との対峙や、その後のテッペリンでの生活の中で、いつのまにか履き潰してしまったのだろう。

「少し、無理をさせすぎてしまいました・・・」

ごめんね、ありがとう。
ニアは残念そうに、でもねぎらうように優しく微笑んだ。残ったもう片方の靴も脱ぐと、ニアは受け取った靴と一緒に、汚れるのも構わずそっと抱きしめる。

視線を落とせば、ニア自身の白い足先も、慣れない生活で絆創膏やテーピングが目立っている。ただ、はだしの爪先は初めて出会った頃と変わらず、きらきらと光っていた。
あの雨の日に、泥にまみれていた、お姫様の足。今もそのイメージは変わらず、華奢で、怖いもの知らずで・・・・こんな細くて小さな足で、一緒にここまで歩いてきたんだから、きっとニアだって無理をしてきたんだと思う。

「ニア、これ履いて。裸足じゃ歩けないから」

ふと出会った頃のように、するりと言った。
言ってしまってから、大昔のようでいてほんの少し前の記憶をなぞった言葉が、なんだか照れくさく思える。それはそれとして、ちょっと苦労して脱いだ靴をニアの前に揃えて置くと、ニアは少し目を丸くしていた。

「・・・・ニア?」

動こうとしない彼女の表情は逆光でよく見えない。虹色の残像に目をしばたいていると、この肩に、ふいにニアの額が寄せられた。そして彼女らしからぬぽつりとした声が耳元に落ちた。

「ありがとう、シモン」

柔らかい髪が頬を擽る。
摺り寄せられた彼女のあたたかい体温に、ニアのすべてを感じた。

もしかすると泣くのだろうか。なんとなくそんな気がしたけれど、ニアはただ落ち着いた呼吸で、側によりそうだけだった。少し、疲れていたのかもしれない。
ただその体を受け止めることしかできず、何も言えずに、そっと優しくニアに触れた。
それに誘われて、ゆっくりと顔をあげた彼女が言う。

「シモンの靴があれば、どこにだっていける気がするの。だから・・・ありがとう」

ニアは嬉しそうに微笑んで、俺を見た。途端に、また心臓が騒ぎだす。
テッペリンの瓦礫の中で一人、ニアが何を想っていたのか、俺にはさっぱりわからない。
それが少し口惜しくて、でも、目の前で微笑むニアの強さにどうしようもなく惹かれる。そんな彼女がたよりなく、この身によりかかる・・・その弱さで、自分を求めるニアもまた、かわいくて仕方なかった。

俺は、ニアにとってただ一人の人になりたい。
守りたい。一緒にいたい。一人でどこかへいってしまわないように、縛り付けておきたい。ずっと自分の靴など持たなければいい。いつだって隣にいて貸してあげるのに。

「・・・・・うん」

捩れたような奇妙な感覚を覚えながらも、やはり心臓は単純素直に、すきだ、とどきどきするばかりだった。この気持ちは、どうしてこんなに自分勝手なんだろう。もっと、ニアのことを大切にできればいいのにな。
そんなことを考えながら、ニアの手を握ると、きゅっと握り返してくれた。

帰ろうか、といえば、ニアは頷く。
ともに歩き出したところで、やっぱり歩幅も、足音もばらばらで、まったく一緒になんてなれない。
俺の意思で彼女の歩みを止めることも。
・・・でも、だからこそ、こうして二人で並んで一緒に帰る。
そんなちょっとしたことが、幸せだと思った。

Close↑

[RSS] [Admin] [NewEntry]

[2008.05.11(Sun) 21:54] 二次創作 Text | Trackback(-) | Comment(-)
↑TOPへ


TOP | NEXT

Mein Schiff

カレンダー

MENU

Link

メールフォーム

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。